「セイコー ゴールドフェザー」は1960年、当時世界最薄となる厚さ2.95mmの中3針ムーブメント、キャリバー60を搭載し、羽根のように柔らかな装着感を持つ薄型ドレスウオッチとして誕生した。このセイコー薄型メカニカルウオッチの原点たるモデルを、2024年に「薄く」「軽やかで」「空気をはらみ」「艶やかで」「優美」という羽根の特性をデザインコンセプトに据え、現代的な仕様と意匠に昇華させたのが「クレドール ゴールドフェザー」だ。今回、同コレクションに初となるトゥールビヨン限定モデルが加わることとなった。
本モデルには、薄型の手巻きトゥールビヨンムーブメント、キャリバー6830の系統を継ぎ、厚さわずか3.98mmという極めてコンパクトなサイズを実現した新開発ムーブメント、キャリバー6850を搭載。このムーブメントは、2023年秋に黄綬褒章を受章した齋藤勝雄氏の卓越した技術により、精緻に組み上げられている。本機におけるトゥールビヨンの表現手法が非常に秀逸で、9時位置に配置されたトゥールビヨンキャリッジを燦然と輝く太陽に見立て、そこから迸るエネルギーが優美な鳥の群れへと転じ、12時位置のクレストマークへ向かって飛翔する様をダイアル上に描写している。
この芸術的な表現は加賀蒔絵の達人、田村一舟氏による極めて繊細な漆芸によるもので、トゥールビヨンキャリッジを取り巻く装飾には蒔絵の技法、ダイアル内側の赤みを帯びた金色の鳥には24金などの極薄板を貼る切金(きりかね)の技法を駆使。加えて、外側の色鮮やかな鳥たちには螺鈿(らでん)の技法が採用されている。繊細に湾曲したダイアル上には、漆を用いて色鮮やかな金、白蝶貝、夜光貝が丹念に貼り付けられ、漆を重ね、表面を滑らかに研磨する工程が幾度となく繰り返すことで、文字盤に絢爛たる輝きを生み出した。田村氏が真骨頂とする陰影際立つ立体的な高蒔絵で、クレストマークやCREDORロゴに加え、今回初めて極細の「Goldfeather」ロゴも描かれている。さらに、トゥールビヨンキャリッジを支える受けは、翼を広げた鳥の姿をモチーフとし、その頂点のエッジや側面の絹目模様など、細部に至るまで完璧なまでに美しく仕上げられている。
直径38.6mmのプラチナ950製ケースは、ケースと裏蓋が一体化した構造を採用することで、堅牢性を維持しつつ、8.6mmという驚異的な薄さを実現。熟練した職人の手作業によりケース表面は丹念に磨き上げられ、
AUDEMARS PIGUET レプリカ
裏蓋ガラスもまた湾曲させることで、ケースからガラスへの滑らかな連続性を追求。これにより、腕元での装着感は柔らかく快適そのものだ。
本機は裏蓋がシースルー仕様となり、卓越した職人技が遺憾なく発揮されたムーブメントの姿は鑑賞可能。トゥールビヨンキャリッジから偏心状に力強く広がる彫金と漆芸の融合によって、猛禽類が羽ばたく際に揚力を生み出す風切り羽(かざきりばね)の精緻な表現と、三日月形の優美な夜光貝の螺鈿に、羽根の輪郭が高蒔絵で立体的に表現されるさまは圧巻だ。ムーブメントの受け部分には、外側に向かって力強さを増す羽根の姿が彫金されるが、これはクレドールの彫金工房が手掛けたもので、多種多様な工具を駆使し、わずか0.15㎜の深さで彫刻が施されている。
「クレドール ゴールドフェザー トゥールビヨン限定モデル」は、加賀蒔絵の優美な芸術性と、ゴールドフェザー、トゥールビヨンという3つの要素が巧みに融合。世界限定10本という希少性も相まって、まさにレアピースの極みといえるだろう。時計愛好家であれば、一度は目にしておきたい垂涎の逸品である。